メリアと怪盗伯爵
そして、メリアの予感は的中した。
「メリア。アダム・クラーク男爵の不正金の件が女王陛下の耳に入り、彼は宮殿へ呼び出しを受けた・・・・・・。事実調査の為、彼の屋敷には女王陛下の指示で多くの者が出入りすることになりそうだ」
パトリックとエドマンドの口から、アダム・クラーク男爵の不正金の話を聞いていたときから、こうなることは予想できていた。
けれど、実際に母親の代から世話になっていた屋敷の主がそうなってみると、メリアもショックを隠し切れない。
間違いであって欲しいと願う一方、あの屋敷で今も働いている友人テレサのことがひどく気にかかった。
(テレサ・・・・・・!!)
パトリックの方も、珍しく思い悩んだ表情を浮かべ、じっと窓の外を見つめている。
きっと、デイ・ルイス侯爵にうまく利用されてしまった上、裏切りを受けた憐れなクラーク男爵に同情しているのだろう。
いや、デイ・ルイス侯爵の都合のいいように、知り合いを利用されてしまったことへの憤りと、同時に何も出来ないでいる自分自身にも苛立ちを覚えているのかもしれない。
黙り込んだまま、何も言わなくなってしまったパトリックに、メリアは堪らずに声を掛けた。
「パトリック様・・・・・・? 大丈夫ですか・・・?」
「あ、ああ・・・」
上の空と言う感じで、パトリックが応えた。