メリアと怪盗伯爵
「なぜ今その話が出てくる。お前の話はいつも突拍子が無い・・・。ちゃんと話してみろ
」
溜息をつき、エドマンドはパトリックを取り敢えずソファの腰掛けさせた。
「・・・君も知っての通り、アダムの屋敷がデイ・ルイス侯爵の思惑通りイザベラ女王の調査の対象になってしまった。そしてそれを、僕は止めることができなかった・・・」
パトリックのいつになく真剣な顔つきに、エドマンドも、今回ばかりはいつもの衝動的な行動とは少し違うようだと感じ取った。
「その件はお前だけのせいでは無い。デイ・ルイスの動きを知って泳がせたのは俺だ。即ち、奴を止めることができなかったのは俺のミスでもある」
エドマンドはベストを羽織ったシャツの袖を捲くり、パトリックの前のソファに腰掛ける。
「それでだ。それがなぜあの子の話にすり替わる?」
腕組みし、エドマンドはパトリックを見つめた。
「あの夜会で、メリアはデイ・ルイス侯爵と挨拶を交わした・・・。そのときの彼を見て、僕はすぐにピンときたよ」
じっと目を細め、パトリックはあの夜会での一場面を振り返っていた。
可憐なドレスに身を包んだ子猫のように愛らしいメリア。
彼女のはにかんだ笑みに、デイ・ルイス侯爵の興味深気な目。
「彼は、メリアに目をつけた・・・。これでも、僕は多くの色恋沙汰を見てきたんだ。彼女は気にしてはいないようだけれど、これだけは自信を持ってそう断言できる。彼はメリアをどうやったって手に入れる気だ」
茶色い瞳に、僅かにエドマンドの視線が揺れる。
少なからず、彼も動揺しているようだ。