メリアと怪盗伯爵
「や、やっぱりご迷惑ですよね!! いいんです、自分で届けに行って参ります!!」
侍女風情が、主に頼み事をするなんて、到底考えられないことだ。
メリアはあたふたとしながら、急いでスコップやら苗やらを手に掻き集めた。すぐに片付けを済ませてしまうつもりなのだ。
「迷惑なものか! 君の頼みならば、喜んで引き受けるさ」
目を輝かせ、パトリックはメリアの手から苗を剥がし取った。
「えっ、や、パトリック様、そのまま触られると、お洋服が・・・」
青くなってメリアが止めようとするのも構わず、パトリックは穢れない少年のような満面の笑みを浮かべた。
「僕に任せてくれ! 今すぐに戻ってダニエルに届けておくよ!!」
メリアの声が全く耳に届いていないらしく、パトリックはメリアに頼りにされたという事実に酔い浸っているらしい。
「そんな急がなくても大丈夫ですし、ご帰宅の際でも十分・・・」
「心配無い! サプライズは僕の得意分野だ。こんな苗でも、最高のプレゼントに仕立て上げてみせるよ」
もう、我世界に入りきってしまっているパトリックに、メリアは苦笑を漏らした。
「そ、そうですか・・・?? じゃあ、お願いしますね・・・」
パトリックは、来たときよりも遥かに軽い足取りで駆け出した。
(な、何も走ってまで行かなくても・・・)
そんな彼の後姿を見つめながら、メリアは小さく心の中で呟いた。