メリアと怪盗伯爵
「聞いてよ、メリア! ひどいのよ?? この屋敷の関係者は、旦那様の容疑がはっきりするまではこの建物から出ちゃいけないって・・・。まさに軟禁状態よ。わたしなんて、ここ数日全然自宅へ帰してもらっていないんだから・・・」
そう言ったテレサの顔には、疲労が滲み出ている。
忙しいことになれている彼女がこれほど疲れているのだ。余程今の状態が良くないことが分かる。
「そうみたいね・・・。だからわたしが助けに来たの。屋敷は兎も角、無関係の人まで無理矢理留めておくなんて変よ」
メリアは不機嫌にそう呟く。
「クローゼットの裏から外に通じる扉の近くには見張りはいなかったわ。ここから逃げましょ」
クローゼットを指差し、メリアはテレサを促した。
「・・・ダメよ。知らないの? ここの扉は一方通行よ。扉の開く角度が小さすぎて、クローゼットの裏からじゃ通り抜けることはできないわ。たとえ向こう側からはなんとか通れてもね・・・」
テレサ自身、何度か内側から外側に向けて通り抜けできないか試したことがあったが、結局一度も通ることができないでいた為、実はその事をよく知っていたのだ。
「そうなの!?」
驚いたように、メリアはクローゼットを見つめる。
「でも、このクローゼットって後から設置されたものよね? なんとか取り外しできないのかしら??」
そう言ってメリアはまじまじとクローゼットの端の辺を観察する。
「無理だと思うわよ? 頑丈に据えつけられているし、なんせ、これを取り外すにせよ今は道具さえ無いわ」
テレサの言葉に、メリアはがっかりしたように屈み込んでしまった。