メリアと怪盗伯爵
「アダム・クラークです。それは光栄です」
初対の挨拶を終え、クラーク男爵の指示でメリアとテレサは二人の客人を屋敷の中へと案内する。
テレサは始終メリアに目線で合図を送ってくる。
これは、テレサが二人のうちのどちらかに『ビビッ』ときたという証拠だ。
「モールディング伯爵、ランバート伯爵、よろしければお荷物をお持ち致しましょうか」
テレサが機転を利かせたようだ。
「こんなに可愛いらしい女の子に、こんな物は持たせられないよ」
困ったように、モールディング伯爵が言った。
「いえ、それがわたくし共の仕事でございますので」
テレサは、そんな優しい心遣いのモールディング伯爵に顔を赤らめ、それでも荷を預かろうとする。
「大丈夫、こう見えて僕はなかなか力持ちなんだよ」
優しく、そして紳士的な態度。
逞しい身体・・・。
メリアはぼんやりと昨晩の出来事を思い出していた。
地下の物置き部屋のソファーに腰掛けていた闇の騎士の姿を・・・。