メリアと怪盗伯爵

「そんなことを言わないで、テレサ。わたしとテレサには、エドマンド様に大きな借りがあるのだから・・・。そのことを忘れないで?」

 こんなことを言いたかったんじゃない。でも、メリアは少しでもエドマンドの助けになりたいと願っていた。それは、恩返しの意味でもあるし、何より彼にこれ以上迷惑をかけたくは無いという、強い思いからだった。
 そしてその他にも、メリア自身も気付いていない感情がその底深くに存在している。
 けれど、それが一体どういったものなのか、この時のメリアにはまだ理解できなかった。

「まあ・・・、そうね。確かにエドマンド・ランバート伯爵があのとき来てくださっていなければ、メリアもわたしも今頃ここにこうしていなかっただろうし、ね・・・。あなたの言いことも一理あるわ」
 
 あまり納得はいっていないようだが、とりあえずのところ、こうしてパトリックの取り計らいによって、テレサはしばらくの間彼女の専属侍女として、エドマンド・ランバート伯爵家へ留まることとなった訳だ。







< 167 / 220 >

この作品をシェア

pagetop