メリアと怪盗伯爵
メリアは急いで自室へと戻り、大小さまざまな瓶を次々とテーブルの上に並べてゆく。
中には、メリアが時間のあるときに乾燥させたり、燻したりした豊富な種類のハーブが種類ごとに入れられている。
そこから、一つまみずつ取り出し、メリアは慣れた手つきでティーバッグ用の袋に詰め込んでゆく。
ペパーミント、ラベンダー、ラズベリーリーフ、レモンバーム、レモングラス、ローズレッド、ローズピンク、ジャスミン、スペアミント。
その全てが発熱に効果のあるものばかりだ。
そうした袋をいくつも作り上げ、メリアは急いでエドマンドの自室へと向かった。
(これが効くかは分からないけれど、きっと何もしないよりはずっといい筈よ)
彼の部屋の前に立ち、メリアはすっと息を吸い込んだ。
扉に手の甲をそっとあて、数回ノックしてみる。
しかし、彼の返事は無い・・・。
意を決し、メリアは思い切って彼の部屋の扉を開いた。
「エドマンド様・・・?」
すっかり日が落ち、部屋は暗がりに包まれている。
それなのに、彼は灯りを点けていないらしく、部屋の中は真っ暗のままだ。
よく見えない部屋の中、メリアは手探りでなんとかテーブルを探し出し、そこへ持ってきた水桶とハーブ達を一旦置いた。
(えっと、灯り、灯り・・・)
やっと部屋のランプに灯りを灯すと、暗かった部屋が薄っすらと明るく広がった。
だが、そのせいで部屋の中で起きていた大変なことにメリアは気付き悲鳴をあげた。
「エドマンド様!?」