メリアと怪盗伯爵
「そうですか…。噂通りの真面目な男のようですね、彼は」
一体何を考えているのか分からないデイ・ルイス侯爵は、メリアの動揺に勘付いているのかいないのかも悟らせることなく、穏やかな口調で続けた。
(この人、エドマンド様の嘘に気付いているわよね…??)
メリアは不安な心を奮い立たせながらまた偽の笑みを浮かべる。
「なんだか、少し妬けますね…」
「へ??」
穏やかな口調ではあるものの、溢すようにそう口にしたデイ・ルイス侯爵をメリアは眉を顰め見上げた。
「エドマンド・ランバート伯爵という男が羨ましい。血縁関係という強い絆で結ばれているからでしょうか? 貴女にこれ程までに慕われる彼がね」
仮面ごしに見下ろしたデイ・ルイス侯爵の目は、メリアの視線とぶつかった。
一体何のことを言われているのかがさっぱり理解できないメリアに、彼は更に続ける。
「貴女は”エドマンド”という男を誰より信頼している。……パトリック・ランバート伯爵よりも、ずっと……」
見つめらたまま、メリアは大きな瞳をこれ以上無い程に見開きその目を見つめ返していた。
言葉が出なかったのだ。