メリアと怪盗伯爵
「エドマンド様??」
メリアは、屋敷の入り口の階段を、きょろきょろと周囲を見渡しながら降りてゆく。
入り口の近くに立っていた受付の男がいたっきり、そこにはすっかり人気は無い。
「エドマンド様、一体どこに…」
その時、ガサッと近くの草の茂みが揺れるのが視界に入った。
おそるおそるメリアはそちらに近付き、もう一度名を呼ぼうとしたが…。
「!!!!」
突然草の陰から飛び出してきた手に口を押さえ込まれ、メリアは一瞬にして草むらへと引き込まれてしまう。
驚きで足をばたつかせようとするが、思いドレスで身動きすら取れず、おまけに口を覆われているせいでちっとも声さえ出ない。
「んん!! んー!!」
抵抗するメリアの口と鼻にに、その謎の手は何やらツンとした臭いを発する布を押し付けてきた。
それを嗅いだ途端、急に目の前が朦朧としてきて、メリアは意識を手放した。
(一体…、何なの……??)
薄れゆく意識の中で、メリアは誰かがぼそぼそと何やら話している声を聞いていた。但し、その内容までは理解することはできなかったが。