メリアと怪盗伯爵

(な・・・、なんなの、あの人・・・。わたしが何をしたというの?? ここで働いてから、一度だって礼儀作法で叱られたことなんて無かったのに・・・! あの人、初めからわたしを目の敵にしているんだわ!!)

 怒りで涙が溢れ、メリアは侍女服のエプロンの裾をぎゅっと握り締めた。
 
 

 会食が終わり、食事の後片付けを始めたとき、テレサがメリアのところへ飛んで来た。
「メリア!! 一体どうしちゃったの!? なんでこうなったのよ?」
 メリアは、事の次第をテレサに打ち明けた。
 但し、昨日の疲れで皿を置く時の手が僅かに震えたと、事実を少し変えてはいたが・・・。

「何それ! ひどい人ね、ランバート伯爵って。すごく利発そうで、鼻筋も通っていて美男子だから、きっといい人だって思っていたけれど、違ったみたいね! それに比べてモールディング様はお優しい、お綺麗だし、笑顔は素敵だし・・・」
 テレサはすっかりモールディング伯爵に熱を上げているようだ。
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