メリアと怪盗伯爵
「ん・・・・・・」
メリアはひどい頭痛で滲む視界で、懸命に瞼をこじ開けようとした。
今、彼女は誰かに優しくそっと抱き上げられていた。
ひどく温かく心地よい心臓の音がメリアの耳に届く。
「貴方は・・・・・・」
「もう少し眠るといい」
その静かで優しい声に促され、メリアはもう一度瞼を閉じた。
「・・・なぜ、貴方がここに・・・?」
うわ言のようなメリアの問いに、彼は呟くようにこう答えた。
「君がピンチに陥ったときには、助けに来ると約束しただろう?」
その声は、既に眠りに落ちてしまったメリアの耳には届いてはいなかった。けれど、彼は満足気に微笑み、彼女の額にそっと薄い唇を落とした。
「メリア・・・・・・!!」
前方からもの凄い剣幕で駆け寄ってくる白馬に跨った紳士を闇の騎士はじっと静かに見つめた。
「貴様っ!! その子に一体何をした!?」
馬から颯爽と飛び降り、駆け寄ってきたパトリック・モールディング伯爵に向けて、闇の騎士は容赦無い一言を告げた。
「今まで一体どこで何をしていた、パトリック」
驚き怯んだパトリックに、彼はメリアの身体を押し付けるようにして受け渡すと、鋭い目を向けた。