メリアと怪盗伯爵
「この子を危険に陥れたのはお前自信だぞ、パトリック」
「・・・・・・なぜ君がここに・・・・・・? エドマンド。まさか・・・!」
小さく頷くと、エドマンド・ランバート伯爵は言った。
「ああ、闇の騎士(ダーク・ナイト)の正体はオレだ。全てはあのデイ・ルイスに対抗する為・・・・・・」
「そうか・・・。だからああやって今まで無理を・・・」
パトリックは唇を噛み締めた。
「なぜ一言僕に相談してくれなかった!? 伯爵という地位を持ちながら、闇の騎士(ダーク・ナイト)に扮するということは、国やこの国全ての人々を敵に回すということ
だぞ!? そんな重圧をどうして一人で背負い込もうとする!?」
エドマンドはパトリックに和らげた視線を向け言った。
「だからこそだ。お前をその危険と重圧に巻き込みたくは無かった。そんな危険を背負うのはオレ一人で十分だ」
「何を今更? 僕らは十年来の友人じゃなかったのか?」
パトリックの淋しそうな顔をエドマンドは静かに見つめた。
「お前は誰より信頼できる男だ、パトリック。だからこそオレは今真実を話した。・・・・・・オレは戦で名を上げ、爵位を賜った成り上がりの貴族だ。だが、お前は違う。由緒
ある血筋のモールディング家の嫡男。こんなところで名を穢すべきじゃない。オレみたいにな」
共に長く過ごしてきたエドマンドの言おうとしていることを、パトリックは感じ取っていた。
「エド、君は・・・・・・」
「デイ・ルイスを政界から引き摺り降ろし、ランバート家は共に滅びる」
「それなら僕も一緒に!」
「モールディング家は滅びさせたりはしない。オレの命にかけてな」
意志の強いエドマンドの目に動揺し、パトリックは黙り込んだ。