メリアと怪盗伯爵
客間に入るなり、エドマンドは握り締めていた金の入った布袋を乱暴にソファへと投げ捨てた。
「エドマンド様、どうかなさったんですか??」
明らかに不機嫌な様子のエドマンドに、メリアが慌ててベッドの中から投げかけた。
「どなたかいらしていたんですか?? 何か下で・・・・・・」
「荷物をまとめろ、今すぐに」
昨日嗅がされた薬のせいで、まだ気分の優れなかったメリアは、大事をとって客室のベッドで休んでいるところだった。
「へ?」
状況が飲み込めず、間抜けな返事をしたメリアを無視するように、エドマンドは彼女の荷が入っているクローゼットを乱暴に引っ張り開けた。
「ど、どうかなさったんですか?? わたし、また何かしましたか??」
物音に驚き、メリアの部屋に飛び込んできたテレサが、真っ青になってわなわなと唇と震わせている。
レディーの私物を無断で引っ掻き回すなんて持っての他だとでも言いたげな目を向けている。
「出て行けと行っているんだ。もうこれ以上は我慢の限界だ。今すぐパトリックの屋敷へ帰れ」
冷たい声で荷物用のトランクを床へ投げつけると、エドマンドが言い放った。
メリアは目いっぱいに涙を浮かべ、ゆっくりとベッドから起き上がった。
「君は事の重大さが分かっているのか!? 昨日パトリックの助けがなければ今頃はどうなっていたと思っている?」
そう言ったエドマンドに、メリアは口を噤んだまま言い返すことは無かった。
突然のことで昨晩のことをはっきりとは覚えてはいないメリアだったが、確か、エドマンドに呼び出されて屋敷の外へ出た筈だった・・・・・・。
けれど、どうやらあれは違ったようだ。メリアはまんまと何者かに騙されて、のこのことあの場にやって来たということになる。
(エドマンド様が呆れるのは無理も無いわ・・・・・・。それでなくとも、私の存在はエドマンド様にとって足手纏いでしか無いっていうのに、ああして簡単に騙されるような失敗
をしてしまったんですもの・・・・・・)