メリアと怪盗伯爵
「そうだったんですか」
”エドマンド”という名前を聞いた途端、メリアはしゅんと下を向いてしまう。
「どうかした・・・?? メリア」
心配そうにモールディング伯爵が下を向いたメリアを覗き込む。
「い、いえ・・・」
勘付かれてはいけない、と、メリアは無理矢理作り笑いを浮かべる。
けれど、そんな見え透いた嘘は、どうやらモールディング伯爵には通用しなかったらしい。
「無理しないで、大丈夫。ここには僕以外誰もいないから」
最初から、全てを見透かされていたらしい。
堰を切ったように、パタパタと零れ出すメリアの涙に、モールディング伯爵はふっと口元を緩めた。
「ね、何があったの? 僕で良ければ力になるよ」
モールディング伯爵は、胸ポケットからすっとハンカチーフを取り出しメリアの涙を拭ってやった。