メリアと怪盗伯爵

 一通りの涙を流し終えた後、メリアは戸惑いながらも事の成り行きを彼に打ち明け始めた。

「実は・・・、わたし、あの屋敷をクビになったんです・・・」
「え!?」

 モールディング伯爵さえも、まさかそんなことは全く予期していなかったようで、ひどく驚いて声を上げた。

「でも、急にまたどうして? 君のティーはとても美味しかったし、僕は君の仕事ぶりにとても満足していたけれど・・・」
 メリアはふるふると小さく首を横に振った。

「いいえ・・・。失敗ばかりの一日でした。それも、とても大切なお客様のもてなしを台無しにしてしまいました・・・」
 それを聞いた直後、モールディング伯爵は、じっとメリアの潤んだ目を見つめ、小さく溜息をついた。

「ひょっとして、ティーの一件が原因かい?」
 黙り込んだまま、メリアは小さくなってこくりと頷いた。

「僕もエドマンドも、あのことはアダムには伝えずにいたんだけれど・・・」
「わたしが自分で報告したんです・・・。旦那様の大切なお客様だとお聞きしていたので・・・」
 くすりと苦笑を浮かべ、モールディング伯爵は馬車の窓の外へ視線を移した。

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