メリアと怪盗伯爵

「君は真面目な上に心配性なんだね」
 困ったようにメリアはモールディング伯爵を見つめた。
「大丈夫。僕はこれでもモールディング家領地を治める領主だし、交渉は得意だよ」
 そう言う彼を今にも泣きそうな潤んだ目で見つめ返してくるメリアに、モールディング伯爵はまた苦笑を浮かべた。

「分かった・・・。君は自分のことより何より人のことが気にかかって仕方が無いタイプみたいだね。じゃあ・・・、こんなお願いならどうかな?」
 メリアは今初めて、借りたハンカチーフがひどく高級なものだという事に気付き、はっとしてそれを見つめている。

「うちの屋敷の侍女として、君を雇わせてくれないか?」

 ハンカチーフばかり気にしていたメリアは、
「へ!?」
と、あまりの驚きで馬車の中で思わず立ち上がってしまった。

『ゴンッ』

 にぶい音とともに、メリアの頭蓋骨にもの凄い衝撃と痛みが走る。

「いっっ・・・・!!!」
 頭を抱えて座り込むメリアに、「大丈夫!!??」と、慌てるモールディング伯爵。
「ちょっと見せてごらん」
 ぶつけたメリアの頭を心配そうに覗き込み、
「よかった、血は出てないみたいだ・・・」
 と、言った。

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