メリアと怪盗伯爵
いきなり至近距離に、しかも自分の頭に触れているモールディング伯爵に気がつき、メリアは顔が発火しそうになる程真っ赤になって俯いてしまう。
(な、何してるのよ、わたしったら・・・! もう、モールディング様の前でバカバカ!!)
そんなメリアに気付かないまま、モールディング伯爵は話した。
「勿論、君の迷惑じゃ無ければの話だよ? 屋敷の中に空き部屋もたくさんあることだし、君さえ良ければ住み込みで働かないか?」
信じられない申し出に、すっかり固まってしまうメリア。
「これは、正式な僕からの申し出だよ? 君の入れたティーは最高だったから」
あんな出来事があったにも関わらず、彼はメリアの入れたティーの味を覚えてくれていたらしい。
「わたしのようなクビになった者を雇い入れて、モールディング様の名誉が傷がついてしまうのでは・・・?」
あまりに心配性なメリアに、彼は「いいや」と、返事をした。
「大丈夫! そんなことは全くない! うちの屋敷は変わり者が多いんだ。きっと君も気にいると思うよ」
と、モールディング伯爵は意味深な言葉を続けた。