メリアと怪盗伯爵

 いきなり至近距離に、しかも自分の頭に触れているモールディング伯爵に気がつき、メリアは顔が発火しそうになる程真っ赤になって俯いてしまう。

(な、何してるのよ、わたしったら・・・! もう、モールディング様の前でバカバカ!!)

 そんなメリアに気付かないまま、モールディング伯爵は話した。
「勿論、君の迷惑じゃ無ければの話だよ? 屋敷の中に空き部屋もたくさんあることだし、君さえ良ければ住み込みで働かないか?」
 信じられない申し出に、すっかり固まってしまうメリア。
「これは、正式な僕からの申し出だよ? 君の入れたティーは最高だったから」

 あんな出来事があったにも関わらず、彼はメリアの入れたティーの味を覚えてくれていたらしい。

「わたしのようなクビになった者を雇い入れて、モールディング様の名誉が傷がついてしまうのでは・・・?」
 あまりに心配性なメリアに、彼は「いいや」と、返事をした。

「大丈夫! そんなことは全くない! うちの屋敷は変わり者が多いんだ。きっと君も気にいると思うよ」
 と、モールディング伯爵は意味深な言葉を続けた。


 
< 35 / 220 >

この作品をシェア

pagetop