メリアと怪盗伯爵
「メリアさん。わたしは忙しい身ではありますが、貴女の教育係として、できるだけ貴女の仕事をサポートできるように努めますね」
片眼鏡を白い手袋の手で流れるようにくいとかけ直すと、セドリックが言った。
「セドリックさん、よろしくお願いします。わたし、精一杯頑張ります」
メリアも姿勢を但し、ペコリとセドリックにお辞儀をする。
「流石はアダム・クラーク男爵の屋敷に勤めていただけはありますね。基本的な身のこなしはクリアーしているようです。後は、この屋敷のやり方に慣れていけば、きっとなんとかなるでしょう」
セドリックの言葉に、メリアはぱっと顔を輝かせる。
「但し、ここは以前の屋敷のように常識は通用致しませんよ?? パトリック坊ちゃんをはじめ、少々変わり者が多いですから・・・」
小声でセドリックがメリアに耳打ちしたが、すでにモールディング伯爵は別のところに意識がいっており、全く聞こえていない様子だ。
「メリア、こっちはダニエル。小さな庭師だ」
メリアの下からじっと見上げてくる七、八歳の少年。
「はじめまして、ダニエル。よろしくね」
小さな子どもを見ると、ついつい顔が綻んでしまうメリアだったが、このダニエルに対してもその例外では無い。