メリアと怪盗伯爵

 そんなやり取りをしていた直後、

「俺だ。入るぞ」

『ガチャリ』と突如ドアが開き、メリアはそこから現れた人物とバチッと目が合い、石のように固まってしまった。エドマンド・ランバート伯爵。

「あれ、エド。来てたの?」

 パトリックが別段驚いた様子も無く、あっけらかんと言う。
 入室してきたエドマンドの方が状況が飲み込めず眉を顰めている。

「言っておくが、俺はちゃんとノックしたからな。例のごとくお前が全然聞いていなかったというだけだ」
 エドマンドはメリアを胡散臭そうにじっと見つめたまま、パトリックにそう言い訳をする。確かに、パトリックは夢中になるとよく周囲の音が耳に入らなくなることが多い。

「わかってるさ、最近じゃもう君が勝手に屋敷にやって来て、勝手に部屋へ入ってくることに驚かなくなったよ」
 テーブルに引き出しごと並べていたスカーフをしまいながら、パトリックはエドマンドに言った。


「そんなことより・・・。なぜ君がここにいる・・・??」
 それが、メリアに対しての問い掛けだということに気付き、メリアは青くなってごくりと唾を飲み込んだ。
 そんな微妙な空気に気付き、パトリックはすかさずフォローを入れる。
「彼女はうちで働くことになった。僕の身の回りの世話をしてくれることになっているんだ」
 にこにこと嬉しそうに話すパトリックに、エドマンドは「へえ」とあまり興味の無いような返事をした。



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