メリアと怪盗伯爵

「考えておくよ」
 苦笑いを浮かべ、パトリックはそう返答した。

「あら、もうお帰りですか?」
 
 そんな声に、二人が振り返った。

「ちょうど良かった。メリア、エドの見送りを」
 一瞬メリアの目とエドマンドの目がかち合った気がしたが、メリアは気まずさでペコリと頭を下げることで視線を逸らした。
「なんだ、お前が見送るんじゃなかったのか?」
 エドマンドが急にメリアに見送りを丸投げしたことに眉根を寄せる。
「君が見送りはいいって言ったんだ。それに、僕はこの部屋で”スカーフを選ばなきゃいけない”し」
 含みのある目つきでパトリックがそう言ったのを、メリアはきょとんとした表情で聞いている。
 エドマンドは、それが剣の嗜みについて説教されたことに対するパトリックの密かな逆襲だと知り、抗議の目をパトリックに向けた。

「じゃ、メリア、後は頼むよ」
 優雅で素早い動きでパタンと部屋のドアを閉めると、パトリックは部屋に引っ込んでしまった。

「・・・・・・」
 メリアは一体何が起こったのか理解できず、しばらく閉まったドアを見つめていたが、その脇にエドマンド・ランバートが立っていることを思い出し気まずくなって慌てて目を伏せた。
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