メリアと怪盗伯爵

「あの・・・、お荷物お持ちいたしましょうか?」
 ビクビクしながら、エリアは恐る恐るエドマンドに声を発する。

「大した持ち物も無い。結構」
 変わらぬ表情のまま、エドマンドはメリアの脇を通り抜け、スタスタと歩き始めた。
 慌てて小走りでその後を追いかけるメリア。
 いつも固い表情で、張り詰めた空気を纏っているエドマンドが、メリアは怖くて仕方が無いといった感じだ。


 屋敷の廊下を無言で突き進み、玄関までやって来るまでがもの凄く長い時間のようにも思えた。早く、ここから解放されたいと、メリアは切に願っていた。そして、またもや彼に何かを言われませんように・・・と。



「・・・アダム・クラークの屋敷をクビになったのか?」
 前を向いたまま、エドマンドがメリアに急にそう問い掛けた。
「えっと、その・・・、・・・はい・・・」 
 どう答えていいのか分からず、メリアはぎゅっと目を閉じてそう答えた。というよりも、なぜ彼がメリアが前の屋敷をクビになったことを知っているのかと疑問に思った。

「そうか」
 そう言ったきり、エドマンドは黙り込んでしまう。
 
(パトリック様がランバート伯爵に話したのかしら・・・?)
 メリアは気まずい雰囲気の中はたと首を傾げていると、

「・・・悪かったな」

 ボソリと彼がそう言った。
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