メリアと怪盗伯爵
「僕にとってはそうおめでたい話じゃない・・・」
珍しく思い悩んだ様子のパトリックに、メリアはふと顔を上げた。
「どうしてです? デイ・ルイス侯爵様の妹君のご婚約ですよね? 何か問題でも??」
パトリックは、藁にも縋る思いでメリアの小さな手に飛びついた。
「!?」
急にパトリックの顔がアップでメリアの真ん前まで近付き、澄んだ茶色い目がうるうるとメリアを見つめている。
驚いてメリアは思わず預かっていた上着をパサリと床に落としてしまっていた。
「メリア! 頼む!! 僕はもう君だけが頼りだ!!」
その小犬のようなパトリックの目に、メリアは口をぽかんと開けたままこくこくと頷く。
「僕の”パートナー”として、夜会に一緒に出席して欲しい・・・」
メリアは一瞬頭が真っ白になった。
(へ・・・? パ、パートナーぁ??・・・)