メリアと怪盗伯爵

「はあ・・・。パトリック様、まずは一体どんな理由でそんなことを仰っているのかをお話下さい。それを聞いてから、考えたいと思います・・・」
 パトリックの必死な頼みように、とうとうメリアが折れた。

「わかった・・・。実は・・・」


 パトリックの話に開いた口が塞がらなかった。

 パトリックの話によると、今回の夜会の主役である、デイ・ルイス侯爵の妹君とは知り合いとのこと。それも、随分長い間、彼女から強烈な恋慕の情をぶつけられていたらしい。・・・が、パトリックが彼女の想いを振ってしまう形となり、結果的に彼女を傷つけてしまった。
 その数ヶ月先のことだ。彼女の婚約が決まったのは・・・。
 婚約者は、彼女よりも二十歳も年上の男性で、王族の称号を持つバウスフィールド公爵家の三男。
 誰の目から見ても、明らかにこれは政略結婚だった。おそらくは、兄であるアドルフ・デイ・ルイス侯爵が妹の失恋を、自らの権力拡大に利用したのだろう。

「・・・とう訳で、僕はきっと彼女に恨まれている。できるなら夜会に出席したくはないが、招待を受けているのに蹴るのは失礼にあたる・・・。」
 メリアはパンパンと落とした上着を丁寧にはたく。
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