メリアと怪盗伯爵
「パトリック様は、そのデイ・ルイス侯爵様の妹君の気持ちをお断りされたこと、後悔なさっているのですか?」
パトリックははたとメリアの大きな丸い目を見つめ、「いいや」とはっきりと答えた。
「彼女を傷つけてしまったことに申し訳なくは思っているが、後悔はしていない」
「では、胸を張って夜会に出席してくださいな。でなければ、きっとその妹君はもっと惨めな気持ちになってしまいます」
にっこりと微笑み、メリアはパトリックにそう告げた。
「・・・不思議だな・・・。メリアがそう言うと、なんだかそれが正しいことのように思えてくるよ」
パトリックは、少し気持ちが落ち着いたのか、ふっといつもの柔らかな笑みを浮かべ言った。
「パトリック様はお優しすぎるせいで、きっとあれこれ色々と深く考えすぎてしまうのでしょうね」
メリアはパトリックが自室に向けて歩み始めた後を、ついて歩く。
ふっと困ったようにメリアを横目で見つめると、パトリックは言葉を付け足した。
「でもね、メリア。僕はやっぱり君には夜会に一緒に来て欲しいと思っているんだ」
また冗談を口にしているのかと思い、メリアはそれを軽い気持ちで聞き流そうとしていた。