メリアと怪盗伯爵
「セ、セドリック!?」
「セ、セドリックさん!?」
パトリックとメリアは同時に叫んでいた。
「声を掛けるかどうかでわたしも随分悩んだのですが、やはり、ここははっきりと申し上げさせていただくことにしました」
セドリックは二人に向けて意を決したようにそう言った。
(・・・というか、セドリックさん、いつから後ろに・・・)
些か疑問はあるものの、メリアは口には出さず、取り敢えずは頷いてみる。
「メリアさん! 夜会へは、ぜひ参加を!!」
「は、はい・・・??」
とんでもないセドリックの言葉に、メリアはセドリックの顔をまじまじと見返す。
「いいですか、メリアさん。以前にも話した通り、パトリック坊ちゃんはこの整った容姿で、無意識に次々と女性に愛想を振り撒き歩きます」
ビシッとパトリックの顔を指差し、セドリックは興奮気味にメリアに説明する。
「セ、セドリック・・・」
主を指差すなどもっての他だが、そんなことも無視して、何か抗議しようとしているパトリックをも知らぬ顔したままセドリックは続ける。
「そのお蔭で、パトリック坊ちゃんの行く先々では数えきれない程の女性の影が・・・。ああ・・・、そのせいで、このセドリックがどれだけの苦労を背負ってきたことか・・・」