メリアと怪盗伯爵
ボロボロと涙を流しながら、セドリックはメリアの肩をガシリと掴んだ。
「いいですか、メリアさん! 夜会に出席し、坊ちゃんから決して離れることなく見張るのです!! 坊ちゃんに食いつく悪い虫を追い払ってくださいよ!? それが貴女の仕事です! ええ、仕事ですとも!!」
メリアは、苦笑いを浮かべた。
「ハ・・・、ハハ・・・」
「セドリック」
そう読んだパトリックに、セドリックは見向きもせず遮断した。
「パトリック坊ちゃんは黙っていて下さい。これは私と彼女との仕事の話なのですから」
まるで、主を主とも思わないかのようなセドリックの態度。きっと、この屋敷だからこそ許される所業なのだろう。
「メリアさん、どうなんですか!?」
凄い剣幕で迫られ、メリアは渋々承諾するしか無かった・・・。
頷いたメリアに満足したのか、セドリックは「よろしい」と、ハンカチーフで涙を拭い、にっこりとメリアに微笑んだ。
「では、頼みますよ、メリアさん」
軽い足取りで反転し、セドリックはスキップで屋敷の廊下を駆け抜けて行く・・・。
「ああよかった。この前のキャサリン・デイ・ルイス様の件じゃ、随分苦労しましたから・・・。今晩はよく眠れそうだ」
と、大きな声で独り言を溢しながら。