メリアと怪盗伯爵
デイ・ルイスは、このメイグランド王国ではもの珍しいのであろう自分の顔立ちを、大きな目でまじまじと見つめられていることに、どうやら気付いたようだ。メリアは大きな目でじっと彼の顔を見上げていた。
「初めまして、ミス。アドルフ・デイ・ルイスです。私のことはアドルフと」
そう言ってメリアの前で会釈した男の唇が僅かに動き、それがどうやら笑みを浮かべているのだということを知り、メリアは慌てて頭を下げた。
「は、初めまして。メリアと申します。今夜はお招きいただきまして、ありがとうございます」
そう言ったメリアをデイ・ルイスは不思議そうに見つめた。
メリアの態度は、彼が見てきた多くの令嬢達がとってきたものとはまるで違ったからだ。
「ミス・メリア。素敵なお名前ですね」
デイ・ルイスは、パトリックとは組んでいないもう片方のメリアの手の甲に口付けを落とした。
硬直したように動かなくなるメリア。
デイ・ルイスはそんなメリアをまたもや不思議そうに見つめ、ふっと口元を緩めた。
「モールディング伯爵、君のお連れの方は、とてもはにかみ屋のようだ」
パトリックは変わらない笑みを浮かべ、「ええ、そのようですね」と答えた。