メリアと怪盗伯爵
「先に来てたのか」
彼はパトリックにそう声を掛けた。
全くメリアのことが視界に入っていない様子のエドマンドは、相変わらずの無表情だ。だが、黒の礼服にで金の髪を美しく整えた彼の正装姿は、パトリックのどこか上品な正装姿とはまた一味違った雰囲気だ。
「僕もさっき着いたばかりだ。調度挨拶に回っていたところだよ」
にこやかなエドマンドのすぐ脇で、彼に手をとられた小柄な存在に気がついた。
くるくるとカールした赤毛。
その髪に飾られたオレンジの花が彼女の髪によく馴染んでいる。
白く小さな顔に、ほんのりと色づく頬紅。
小さめの唇に乗せられた淡く艶やかな口紅。
猫のように大きな目は、桃色のアイブローが施されている。
その全てに派手さが一切無く、彼女の身につけている薄いピンクのドレスに合わせられている。
が・・・。エドマンドは彼女をしばらく目を細めてそっと見つめた後、パトリックを信じられないものでも見たかのように見た。
「おい、これは一体どういうことだ!?」
「何が?」
エドマンドの言葉に、パトリックは暢気に答える。
「なぜこの子がここにいると訊いているんだ!」
にっこりと笑みを浮かべ、パトリックはメリアを見せ付けるようにエドマンドの前へ彼女を引き寄せた。