メリアと怪盗伯爵
「今までたくさんの女性を見てきましたが、貴女は他の女性達とはどこか・・・、どこか違うようだ」
デイ・ルイス侯爵は囁くように言った。
彼の言う意味があまりよく分からないメリアは、彼の黒い目をじっと見つめた。
「馬車を呼んだ。すぐに迎えが来る筈だ」
エドマンドの声が聞こえた。
エドマンドが小走りでメリアの元へ戻ってくるところだ。
「彼が戻って来たようですね」
窓の上からデイ・ルイスがそう呟く。
「ミス・メリア、またお会いできるでしょうか?」
「??」
エドマンドに気をとられ、視線を逸らしたメリアが次に窓を見上げたときには、既に彼の姿はなくなっていた。
「誰かと話していたのか?」
エドマンドが首を傾げながら、二階の窓を見上げるメリアに、不可解そうな目を向けた。
「いいえ・・・」
話していたのはデイ・ルイスばかりで、話は一方的なものだった。メリアは決して嘘をついた訳では無い。そして、決してエドマンドに隠し事をするつもりも。
この晩、またもやメリアを取り巻く運命の輪が新たに巡り始めたのだ・・・。