メリアと怪盗伯爵

 そうして、メリアがこのアダム・クラーク男爵の屋敷へと遣いとして訪れることとなったのだった。


 メリアはこの屋敷をクビになった日の後からの事の成り行きをテレサに包み隠さず話した。
 今、メリアは侍女としてでは無く、パトリック・モールディング伯爵家からの大切な客人として、客室に招かれていた。
 
「そう、そんなことが・・・」
 テレサはとても信じられない、という表情でメリアの話を聞いていた。
「けれど、メリア。あなた本当に幸運ね。モールディング様は、本当に素晴らしい人だわ・・・」
 この屋敷に訪れたときから、テレサは彼に熱を上げているのをメリアは知っていた。
「うん、とてもいい人よ」
「良かったわね、メリア」
 にこりと微笑み、テレサはメリアに客人用のティーを差し出した。

「そうだ、メリア。モールディング様の情報をわたしにも譲って頂戴よ? 散々心配かけたのだから」
 ぷんすかしながらテレサはメリアに注文をつける。
「テレサったら、相変わらずなんだから」
 二人はクスクスと笑い合った。
 まるで、以前ここで雇われていたときのように・・・。
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