メリアと怪盗伯爵
「ところで、アダム・クラーク男爵は・・・?」
メリアがそう訊ねると、テレサが困ったように口を尖らせた。
「それがね・・・、今お出かけになっているのよ。帰る時間まではわたしもお聞きしていなくて・・・。手紙なら、預かっておくけれど?」
そう言ってくれたテレサだったが、メリアは少し考えてから首を小さく横に振った。
「いいえ、どうしても直接お渡ししなきゃならないの。パトリック様に、その場で手紙の返事を預かって来るようにと頼まれているし・・・」
余程大切な手紙らしく、テレサも流石にそれ以上の事は言おうとはしなかった。
「分かったわ。でも・・・、本当に旦那様の帰りはいつになるのか分からないわよ? 早いかもしれないし、深夜になるかも・・・」
メリアはこくんと頷いた。
「いいの。待たせていただくわ」