メリアと怪盗伯爵
それから数時間が経ち・・・。
テレサも気にかけて何度もティーを入れ直してくれるが、しまいにはメリアもすっかり待ちくたびれて、客室のソファーでうとうとし始めていた。
「メリア、ねえ、メリアったら」
ゆさゆさと揺さぶられ、メリアは眠い目を擦り目蓋を開いた。
「う・・・ん・・・??」
寝ぼけ眼のメリアを、テレサが困った顔で覗き込んでいる。
「もうすっかり日が暮れてしまったわよ?」
はっとして窓の外を振り返ると、西に沈んだ太陽もほとんど見えなくなくなりかけている。太陽を追いかけるように、夕闇が空を覆い隠し始めていた。
「いつの間に・・・」
メリアは、眠ってしまった自分を叱りつけたい気分だった。
パトリックの大切な用をもう少しで台無しにしてしまうところだ。
「メリア、残念だけれど、旦那様の帰りは相当遅くなりそうよ。明日、もう一度訪ねてみたらどう?」
テレサの提案に、メリアはすっかり黙り込んでしまう。
(困ったわ・・・。明日の早朝には、アダム・クラーク男爵からいただく筈の返事を取りに来られるのに・・・)
パトリックが言うには、パトリックの屋敷に、誰とは知らないが、大切な人物がその返事を受け取りに来るのだそうだ。
即ち、今夜中にアダム・クラーク男爵に返事を貰わないことには、間に合わないという事になってしまう。