ロサは侍女になることにした
「それもそうだな。…さてあの子の様子を見に行くが君も…」
「はい」と間髪入れずに答えた。

診療所はもう何十年も前からあるようで、壁は全てコンクリートで出来ていて冷たい感じがした。ぼろぼろの鉄筋があちこち顔を出している。
薄っぺらのドアを開けるとあの乾いた音が診療所に響く。
少女は殺風景な病室の中央で、長机に布を重ねたベッドもどきに寝かされていた。ここに居る病人や怪我人はこんな柔軟性のない物に寝かせられているのだとリークに聞かされたとき、ロサは心が痛かった。

リークと共に少女に近寄った。
あの時に比べ、顔色がだいぶ良くなっていて、静かながらも安定した寝息がロサを安心させた。
よかった、この子は生きている。
ロサは少女の右手を両手でそっと包み込んだ。
それを見たリークは「君は優しいな。」と言った。

「私が…優しい?」

「赤の他人をまるで家族のように接するところが。」
リークが優しく言うと、ロサは少し目を細め、優しく笑った。

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