ロサは侍女になることにした

ロサ・エディータは、1人で海を見ていた。
海を見たら自分の哀しみも消えるのではないかと、そう考え、食事もとらずにひっそりと海に来ていたが。
哀しみは消えない。
1日が過ぎる度に、哀しみが増していくのが分かる。海は、遠くへ行くほど深い色をしていて、それが何となく自分を表しているようにみえた。日に日に増す哀しみが遠くの海の深さのように。
｢こんな気持ちで来たことは無かったな。｣
ロサが呟いた。
｢それはそうだろうな。｣
急に男の声が聞こえた。
その声にロサは驚いた、誰も来ないと思っていたからだ。
｢あ、村長！……。｣
ロサは瞼をこすり、声の主へと振り向いた。
男は、ゴーディンのカドラ村長。カドラは彼の名であり、村の名でもある。
村長は、ロサに近寄ってこう言った。
｢ロサ、泣いても亡き人は帰って来ない。｣と

｢知っています。ただ、これが現実だと受け止めると辛いです。私が哀しみに押し潰されそうです。｣
ロサは両肩を抱き、嗚咽混じりの震えた声で言った。村長は瞼をゆっくりと閉じた。
｢手放しなさい。そんな受け止めて辛い現実なら受け止めずに放しなさい、私たちは生きているんだから。それにお前さんが何も食べないでぶっ倒れて、誰が喜ぶんだ？｣