野に咲く一輪の花の如く
「本当は、分かっていたんだよ。こんな頑固じじぃの世話までする好青年のあいつに、待っている人がいない筈がない、って……」
あっ、進の事だ!
伊藤さんは相変わらず、私と目を合わせずに続けた。
「だけど……1人では居たくなかった……まるで息子と居るような気がして、我儘言って心配かけて、引き止めてしまった。その結果、あんたにこんな無茶な人探しまでさせる羽目になってしまって……本当に申し訳なかった」
シュンと落ち込んでいるような伊藤さんを見ていたら、私は自然と笑っていた。
「いいえ、大丈夫です。おかげで私、前より強くなれたような気がします」
そう言ってから、ハッと思い出した。