野に咲く一輪の花の如く
「『まだ』って言うけど、なんだか熟年夫婦並みの、なんて言うか……絆みたいなもんを感じるんだ」
「えっ? そうですか? 付き合いが長くて、人生の約半分は一緒だからですかねぇ?」
私がそう言うと、伊藤さんはちょっと淋しそうに笑った。
「そんなに長い付き合いでは、あいつが居て当たり前の生活だっただろうに……居なくて不安だったろう? 本当に申し訳なかった」
「そんな……本当にもういいですから。それより、お孫さん達も帰って来るみたいで、よかったですね」
私はこれ以上伊藤さんが気にしないように、違う話題を振った。