野に咲く一輪の花の如く
「あの、これ……母から預かって来たので、どうぞ」
進の事を訊かれたらなんて答えていいか分からないので、おばさんが話し掛けてくる前にそう言って持ってきた物を渡した。
「あらあら、いつもいいのに……ありがとうね」
おばさんは笑ってそう言い、受け取ってくれた。
「実家は大丈夫だったの?」
「食器とかは壊れたけど、建物自体は大丈夫みたい。両親も怪我はなくて」
「それは良かった」
おばさんは安心したようにそう言ってから、苦笑いをした。
「うちなんか、お父さんは昨日連絡あったけど、職場が大変だからしばらく戻れない……って言うし、進なんか、連絡すらないんだから」
ドキン!
進の名前が不意に出て、心臓が鳴った。