野に咲く一輪の花の如く

「あの、これ……母から預かって来たので、どうぞ」

進の事を訊かれたらなんて答えていいか分からないので、おばさんが話し掛けてくる前にそう言って持ってきた物を渡した。



「あらあら、いつもいいのに……ありがとうね」

おばさんは笑ってそう言い、受け取ってくれた。



「実家は大丈夫だったの?」

「食器とかは壊れたけど、建物自体は大丈夫みたい。両親も怪我はなくて」

「それは良かった」



おばさんは安心したようにそう言ってから、苦笑いをした。



「うちなんか、お父さんは昨日連絡あったけど、職場が大変だからしばらく戻れない……って言うし、進なんか、連絡すらないんだから」



ドキン!

進の名前が不意に出て、心臓が鳴った。


< 59 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop