ドライガール
捧げる
彼に抱かれ、部屋の灯を眺める気分は、今まで味わった事のない幸福感に満ちていた。

私が初めて経験したシアワセ。

窓際に彼はそっと近寄り、外を眺めた。

「何を見ているの?」

「月の光を見ているんだ」

下弦の月が暗い部屋に入り込み、光を灯していた。幾度となく、彼は月を眺め、煙草をふかした。

煙草の火が消えると同時に、彼の心の中の闇がまた私に降り注いだ。

この人も何か迷いを持っている。
< 32 / 40 >

この作品をシェア

pagetop