ドライガール
陶冶は恐ろしいくらい冷静な男だった。
物事の引き出しが多く、話術に優れていた。

「ある日、猫を見たんだ。片手がない猫」

「そう、気の毒だね」

「本人はそう思ってないかもしれないよ。元気に歩いてた。少し、歩きづらそうだったけどね」

「ねえ」、と彼はベッドの中で呟いた。

「不自由なのは本人の思い込みであって、別な視点からすれば、自由かもしれない」

「何が言いたいの?」

「考え方次第って事さ」

そう言うと、彼は背を向け、眠りについた。
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