今度はあなたからプロポーズして
(……っ!?)
(奈々…)
恭一はすぐに降りようとしたが、
無情にもドアが閉まり、
電車は走り出した。
小さくなっていく奈々子を、
恭一は見えなくなるまで
目で追った。
電車の中で恭一は目を閉じると、
奈々子の最後の笑顔が
鮮明に思い浮かんできた。
(戻ろう…)
(だが、戻ったところで、
何ができる?…)
(戻っても奈々は
いないかもしれないじゃないか)
(会えたとしても、また悪戯に
奈々を辛くさせるだけかも?)
様々な思いが交錯する中、
恭一はふと窓の外に目をやった。
薄っすらと写った自分の顔が
情けない男に見える。
(何かできることがあるはずだ)
恭一は
後で後悔するよりはいいだろうと
新宿に着いたら、
とりあえず池袋まで戻ることに
決めた。
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