今度はあなたからプロポーズして
会計は留美が
化粧室に行っている間に
済ませてくれていたらしい。
賢三はフロントのスタッフに
軽く挨拶すると、
そのまま店を出て行った。
留美も整列して見送るスタッフに
恐縮しながら、
そそくさと賢三の後を追った。
「ご馳走様でした」
店の外に出てから、
留美は深々とお辞儀をしながら
賢三に礼を言った。
賢三もお辞儀を返すと、
ランプに照らされた顔は
満足気に微笑んでいる。
外に出ると、
さすがに秋の夜風らしく肌寒い。
ジャケットの襟を掴んだ留美に
「風邪を引いてはいかんからの」
と賢三は気遣って、
遠慮する留美より先に歩き出した。
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