今度はあなたからプロポーズして
傍観している人を掻き分けて、
留美は賢三の横にしゃがみこむと
苦しむ賢三に問いかけた。
「どうしたの??
村上さんっ…苦しいの?…
誰か、救急車!
救急車呼んでくださいっ」
知り合いがいたことで、
親切心が分散されたのか
事態の重さに尻込みしたのか
傍観者達が徐々に離れていく。
遅れて駆けつけた駅員が
留美の叫び声を聞いて、
救急車の手配にまた駆け戻った。
留美は苦しむ賢三を前にして、
ゾッとした。
自分は何も出来ないことに
気づいたからだ。
賢三の昔話はさっき聞いたが、
それ以外のことは
何一つ知らないのだ。
救急車を待つしかない状況が、
留美の焦燥感を余計に募らせた。
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