今度はあなたからプロポーズして









「わたしだけど…何?」




電話が繋がるや否や
わざと不機嫌そうに留美は冷たく言い放ったが




「もしもしっ!
 何かあったのかっ?
 携帯全然繋がらなかったけど」




と恭一は理解すらしていない。





(はぁ?…何かって…だと?)




いちいちイラつきながら




「あ~あ~、ありましたよっ。
 デートすっぽかされた女が
 一人泣いてたから慰めてたの」




と例の如く皮肉を返した。
が、恭一も慣れたもので
たたみかける様に謝り倒してくる。




「いや、ほんとにすまなかった…
 もう、何でも言うこと聞くから
 許してくれ……な」




在り来たりな弁解を並べては
携帯を持ちながら頭を下げている
恭一が目に浮かぶ。




いつもなら至極反省している声色なのだが
今日に限っては何故か嬉々として
その声は明るく弾んでいた。




していないとわかっていながら、




「本気で反省してるの?」




と訊くと、




「お…おぅ、本当にゴメンな。

 この借りは必ず返すからさ」




と恭一は助け船に飛び乗った。







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