今度はあなたからプロポーズして
病室に戻ると、
賢三は天井を見つめて、
ぼんやりしていた。
留美は病室のドアを閉めると、
「具合はどうですか?」
とすっかり安心しきって声を掛けた。
「少し、のどが渇いたかの」
と賢三は口をまごつかせている。
上半身だけ起こすのを手伝うと、
留美は置いてあったポットから
白湯をコップに半分ほど注いで
賢三に手渡した。
賢三は白湯を啜りながら、
正面の壁の絵を眺めていた。
「素敵な絵ですね…
村上さんも、奥様も
…とても幸せそうだわ。
…あ、ごめんなさい、
さっき看護士さんからいろいろ
聞いて…」
留美は
看護士が勝手に話したとはいえ
賢三の知らないところでこの絵に
ついて知り得たことを詫びた。
賢三は、構うもんかという風に
首を小さく横に振って
留美の気持ちを受け流してくれていた。
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