今度はあなたからプロポーズして









いつも何かねだるようなことは
しない春江だったが、




今日に限って、珍しく指定している。





「病室にいても
 女は化粧したいものよ!」





などと冗談交じりに言っていたが




病人の願いくらいは聞いてやるか
とわしは早速デパートに出向いて
赤い口紅を買ってきた。





口紅を受け取ると嬉しそうに






「きれいな色…」






とうっとりとその艶やかな朱色に
見とれていた。







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