今度はあなたからプロポーズして
留美は黙って聞いていたが、
賢三の言葉に
出口が見つかったように思えた。
「ありがとう、村上さん!」
と言って、
感謝の意を込めて手を握った。
幾つもの経験に裏付けされた
賢三の目の奥には
納得させるだけの自信が
みなぎっていた。
その目に圧倒されてか
不安は何処かへとかき消され、
留美の胸にも挑む意欲が
満ち始める。
(そうなんだ…)
(怖がってても何も始まらない)
留美の目の輝きが
増していくのを確認すると、
「陸から海を眺めるだけじゃ、
水平線の向こうは見えんじゃろ
………人生も同じじゃて」
と補足して
歳に似合わずウィンクを飛ばしている。
照れなのかニッと笑う賢三に
留美もクスッと笑い返すと、
握りあう指先にグッと力を込めて
エールを受け取った。
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