今度はあなたからプロポーズして









留美は黙って聞いていたが、
賢三の言葉に
出口が見つかったように思えた。





「ありがとう、村上さん!」





と言って、
感謝の意を込めて手を握った。




幾つもの経験に裏付けされた
賢三の目の奥には
納得させるだけの自信が
みなぎっていた。




その目に圧倒されてか
不安は何処かへとかき消され、
留美の胸にも挑む意欲が
満ち始める。




(そうなんだ…)




(怖がってても何も始まらない)




留美の目の輝きが
増していくのを確認すると、














「陸から海を眺めるだけじゃ、
 水平線の向こうは見えんじゃろ


 ………人生も同じじゃて」








と補足して
歳に似合わずウィンクを飛ばしている。




照れなのかニッと笑う賢三に
留美もクスッと笑い返すと、
握りあう指先にグッと力を込めて
エールを受け取った。









< 176 / 202 >

この作品をシェア

pagetop