今度はあなたからプロポーズして
突然、病室のドアが開いて、
賢三の家族が揃って入ってきた。
「親父、大丈夫なのか??」
と交互に叫ぶ息子さんらしき人が
二人と
そのどちらかの奥さん、
そして、その子供たち。
賢三の幸せに満ちた家族風景が
留美の脳裏に浮かぶ。
「わしなら大丈夫じゃ…
何も全員で
来ることはなかろうに…」
と家族の心配をよそに
賢三は大袈裟にするなと
気を張って見せた。
どうやら家族や職場では
厳格な態度で接してるのだろう。
留美を前にして
どちらが素の自分か計られるのが
少し照れ臭そうだ。
照れ隠しなのか
脇で心配そうに見つめる幼子に
「なぁ」と小声で声を掛けて
心配するなとアピールしている。
巨匠と言えども
孫の前ではやはり優しい好好爺だ。
留実はその光景に
改めて無事でよかったと
内心、ホッと胸を撫で下ろした。
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