今度はあなたからプロポーズして
高速道路を降りて30分程走ると
バスは駿河湾の海に沿う国道を
ゆっくりと進んで行く。
駿河湾の海がまた見え出したとき
恭一が不意に目を覚ました。
「ん?…もう、こんなところか」
と言うと、姿勢を正して
留美と一緒に景色を眺め出した。
御前崎港を越えると、
風力発電のプロペラの向こう側に
富士山が見えると言う。
「御前崎から見ると下が霞んで、
富士山が空に書いた絵のように
見えるんだ。」
と恭一にガイドさながらの説明を
受けて、
見逃すまいと必死に目を凝らすと
説明通りに絵のような富士が顔を
見せた。
「綺麗…」
と一瞬だけ見えた富士の雄大さに
留美は感極まっては見とれていた。
(ここが恭一の育った町かぁ…)
どっしりと構えている富士を背に
眩しく光る海で遊ぶ子供を見て、
留美は恭一の過去と照らし合わせていた。
・