今度はあなたからプロポーズして
「そういえば、まだ名前も
名乗っとらんかったの。
わしの名は、村上賢三じゃ」
「私は葉山留美です」
食事の誘いを受けておきながら
今さら名前を言い合うのが
なんだか少々照れくさかった。
賢三は杖を握る手に力を込めて
ふんっと勢いよく立ち上がると、
「留美さん…か、
では、参るとするかの」
と言うと向かう方角へと手の平を
サッと掲げている。
不器用なエスコートの仕方も
可愛く思えて
留美はフフッと微笑むと
付き添うように一緒に歩きだした。
二人は
名前だけの自己紹介を交わすと
西日がかった公園を後にした。