今度はあなたからプロポーズして
席に座った途端
留美は妙な緊張感に襲われた。
ピンと張りつめた空気を感じる。
それは他ならぬ向かいに座る賢三
から発せられていた。
さっきまでの公園にいた賢三と
今、目の前にいる彼とでは
まるっきり別人のようなオーラを
出している。
黙り込んだまま、
時折見せる賢三の厳しい視線は、
風格を漂わせる何かがあった。
(村上さんて…
やっぱり…何か違う?)
瞬きを忘れるほどの
留美の緊張感に気がついたのか
賢三は瞼の力を弛めると、
元の好好爺に戻って
ニッコリと笑って誤魔化している。
留美は何とか平然を装おうとして
店の中を一回見回したが、
適当な言葉もそう簡単に浮かんで
くることもなく
「お洒落なお店ですね!」
とありきたりな賛辞を
無駄に元気よく言うのが精一杯だった。